研究・メンバー A01

A01_01 染色体が制御する生殖ライフスパン

マウス卵母細胞における各染色体を個別に可視化したライブイメージング

ライフ時間進行に伴う卵母細胞の機能変動を染色体制御から解き明かす。成体期を通して卵母細胞の染色体機能を維持する、またそれが破綻して染色体分配エラーに至るメカニズムを解明する。また、各染色体の個性が分配エラーにつながる機序を理解する。これらから、染色体分配を操作することでエラー防止技術を開発する。マウス卵母細胞をモデルに研究を進めながら、ハダカデバネズミ卵母細胞を用いる系を開拓する。

授乳中のハダカデバネズミ(デバ)

ハダカデバネズミにおける生殖工学技術の開発

ハダカデバネズミ(以下デバ)は、マウスと同程度の大きさながら最大寿命が30年以上の老化耐性・がん化耐性を持つ最長寿齧歯類であり、老化・がん化予防法開発のための実験動物として注目されている。デバ特有の耐性機構を実験的に証明するには、個体の逆遺伝学的解析系の開発が必須であり、そのための生殖工学技術開発を行う。デバは1匹の雌(女王)と1-3匹の雄のみが繁殖する真社会性の社会を形成する。他の個体は性成熟が抑制されているため、非繁殖雌の女王化誘導が研究を行う上で重要である。

A01_02 発生休止が制御する生殖ライフスパン

卵母細胞の発生休止を再現する体外培養系とFOXO3による発生休止制御

哺乳類の雌の生殖ライフスパンを規定する卵母細胞の発生休止機構を解明するために①卵母細胞の発生休止に十分な転写因子ネットワークを解明する、②卵母細胞の発生休止に必要な体細胞環境を再構築して卵母細胞との相互作用を解明する、③体外再構築系を基盤とした卵母細胞の発生休止状態を可視化するライブイメージングシステムを開発して、発生休止に伴う非膜性構造体の動的変化やオルガネラの局在変化を観察する。

蛍光標識した原始卵胞 (マゼンタ:卵母細胞、緑:顆粒膜細胞)

in vivo・in vitroライブイメージングで迫る原始卵胞の発生休止と成長の制御

卵子の供給源である原始卵胞の発生休止と卵胞成長開始の理解に挑む。原始卵胞はどのようにして発生休止状態に入るのか?また発生休止状態にある原始卵胞はどのようにして休止状態を脱して成長過程に入るのか?これらの問いに対し原始卵胞のin vivo・in vitro卵巣を用いたライブイメージングにより明らかにする。またライブイメージングに有用な蛍光標識マウスとイメージング画像を解析する新たな画像解析手法を開発する。

A01_03 代謝が制御する生殖ライフスパン

生殖細胞代謝のライフ時間による変化を捉える

様々な代謝物・代謝経路についてライフ時間依存的な変化を明らかにし、その生殖機能との関わりを明らかにしていく。写真は、オスマウスの胎仔精巣内におけるある代謝物の分布を示す。生殖細胞(レッド)において代謝物(シアン)が濃縮していることが分かる。このように生殖細胞において特徴的な分布を示す代謝物とその役割の解明は、栄養環境からの介入を通した生殖機能の制御に向けた主要課題の一つと考えている。

マウス精巣(切片の免疫染色像)

ライフ時間の進行に伴う生殖細胞のエピゲノム動態の解明

精子に含まれるエピゲノムは、ライフ時間の進行に伴って変化し、その影響は次世代へ伝わる。また、エピゲノムは細胞内の代謝環境によって変動する。本研究では、ライフ時間依存的な代謝環境の変化によって生じる、生殖細胞のエピゲノムへの影響およびその制御機構を明らかにする。

種々のメタボローム解析システム

高感度メタボローム解析系の構築

少数細胞(1,000細胞以下)で実行可能な高感度メタボローム解析手法の技術開発を行う。代謝物は、水に溶けやすいもの(親水性代謝物)からほとんど溶けないもの(脂溶性代謝物)まで物理的・化学的な特徴が多岐に渡ることから、各代謝物群の測定に最適化した高感度測定法の開発を実施する。さらにこの技術を生殖細胞研究に適用することにより、これまで難しかったライフ時間依存的な代謝変化の全容を明らかにする。

微量細胞プロテオミクス

微量試料プロテオミクス法の開発・応用

極微量な試料に含まれているタンパク質の種類と量について、ナノLC-MSを利用する抗体フリーの方法で高感度分析するための技術開発に取り組んでいます。これまで解析が困難だった希少試料に応用できるばかりでなく、研究コストの低減や実験動物の節約にも役立っています。本領域では、セルソーターで単離したマウス生殖細胞(100~1000細胞)の代謝酵素タンパク質の網羅的解析を担当しており、代謝が制御する生殖ライフスパンの解明を目指しています。