理化学研究所生命機能科学研究センター 染色体分配研究チーム
ライフ時間進行に伴う卵母細胞の機能変動を染色体制御から解き明かす。成体期を通して卵母細胞の染色体機能を維持する、またそれが破綻して染色体分配エラーに至るメカニズムを解明する。また、各染色体の個性が分配エラーにつながる機序を理解する。これらから、染色体分配を操作することでエラー防止技術を開発する。マウス卵母細胞をモデルに研究を進めながら、ハダカデバネズミ卵母細胞を用いる系を開拓する。
熊本大学 大学院生命科学研究部老化・健康長寿学講座
ハダカデバネズミ(以下デバ)は、マウスと同程度の大きさながら最大寿命が30年以上の老化耐性・がん化耐性を持つ最長寿齧歯類であり、老化・がん化予防法開発のための実験動物として注目されている。デバ特有の耐性機構を実験的に証明するには、個体の逆遺伝学的解析系の開発が必須であり、そのための生殖工学技術開発を行う。デバは1匹の雌(女王)と1-3匹の雄のみが繁殖する真社会性の社会を形成する。他の個体は性成熟が抑制されているため、非繁殖雌の女王化誘導が研究を行う上で重要である。
大阪大学 大学院医学系研究科ゲノム生物学講座 生殖遺伝学
哺乳類の雌の生殖ライフスパンを規定する卵母細胞の発生休止機構を解明するために①卵母細胞の発生休止に十分な転写因子ネットワークを解明する、②卵母細胞の発生休止に必要な体細胞環境を再構築して卵母細胞との相互作用を解明する、③体外再構築系を基盤とした卵母細胞の発生休止状態を可視化するライブイメージングシステムを開発して、発生休止に伴う非膜性構造体の動的変化やオルガネラの局在変化を観察する。
卵子の供給源である原始卵胞の発生休止と卵胞成長開始の理解に挑む。原始卵胞はどのようにして発生休止状態に入るのか?また発生休止状態にある原始卵胞はどのようにして休止状態を脱して成長過程に入るのか?これらの問いに対し原始卵胞のin vivo・in vitro卵巣を用いたライブイメージングにより明らかにする。またライブイメージングに有用な蛍光標識マウスとイメージング画像を解析する新たな画像解析手法を開発する。
東北大学加齢医学研究所 医用細胞資源センター/生命科学研究科 分化再生制御
様々な代謝物・代謝経路についてライフ時間依存的な変化を明らかにし、その生殖機能との関わりを明らかにしていく。写真は、オスマウスの胎仔精巣内におけるある代謝物の分布を示す。生殖細胞(レッド)において代謝物(シアン)が濃縮していることが分かる。このように生殖細胞において特徴的な分布を示す代謝物とその役割の解明は、栄養環境からの介入を通した生殖機能の制御に向けた主要課題の一つと考えている。
東京理科大学 創域理工学部 生命生物科学科
精子に含まれるエピゲノムは、ライフ時間の進行に伴って変化し、その影響は次世代へ伝わる。また、エピゲノムは細胞内の代謝環境によって変動する。本研究では、ライフ時間依存的な代謝環境の変化によって生じる、生殖細胞のエピゲノムへの影響およびその制御機構を明らかにする。
慶應義塾大学政策・メディア研究科/先端生命科学研究所
少数細胞(1,000細胞以下)で実行可能な高感度メタボローム解析手法の技術開発を行う。代謝物は、水に溶けやすいもの(親水性代謝物)からほとんど溶けないもの(脂溶性代謝物)まで物理的・化学的な特徴が多岐に渡ることから、各代謝物群の測定に最適化した高感度測定法の開発を実施する。さらにこの技術を生殖細胞研究に適用することにより、これまで難しかったライフ時間依存的な代謝変化の全容を明らかにする。
名古屋大学未来社会創造機構
極微量な試料に含まれているタンパク質の種類と量について、ナノLC-MSを利用する抗体フリーの方法で高感度分析するための技術開発に取り組んでいます。これまで解析が困難だった希少試料に応用できるばかりでなく、研究コストの低減や実験動物の節約にも役立っています。本領域では、セルソーターで単離したマウス生殖細胞(100~1000細胞)の代謝酵素タンパク質の網羅的解析を担当しており、代謝が制御する生殖ライフスパンの解明を目指しています。
マウス胚盤胞期胚
マウス新生仔
マウス卵子を操作する様子。体細胞クローンや顕微授精、卵子の核置換などの操作技術を利用することで、ライフ時間進行に伴う卵子の質の変化を明らかにする。
受精後4日間経過したマウス胚盤胞期胚。
仮親子宮への胚移植後19日目に誕生したマウス胎児と胎盤。雌のライフ時間進行に伴い、胎児や胎盤には様々な異常が生じる。
実験用マウスと異なる様々な特性をもつ野生マウス。ゲノム多型を利用することで、両親由来のゲノムを判別し、刷り込み遺伝子の解析などに役立っている。
転写・転写後の組み合わせによる遺伝子調節
霊長類を利用し生殖ライフスパン制御メカニズムの解明に取り組む
研究概要
霊長類とマウスは寿命が大きく違うにも関わらず次世代に伝えられる新規突然変異の数は同程度である。
マウス精子形成の場である精細管のヘマトキシリンーエオジン染色。 幹細胞から精子まで分化している細胞が同心円状に規則正しく並んでいる。
マウス精子形成の場である精細管の免疫染色 (減数分裂期染色体に局在するSCP3に対する染色:緑、マゼンタはDNA)。 幹細胞から精子まで分化している細胞が規則正しく並んでいる。
マウス精巣の免疫組織染色像(RARgamma)
代謝経路阻害の生殖細胞への影響
統計的に有意差のある代謝化合物の特定
特徴的な代謝化合物セットの抽出
人工的に作成した卵母様細胞
人工的に休止させた卵母細胞
人工的に作成した卵子
ハダカデバネズミ
卵母細胞における染色体の三次元追跡。染色体(マゼンタ)、動原体(緑)。
卵母細胞の紡錘体。染色体(青)、動原体(マゼンタ)、微小管(シアン)。
老化した卵母細胞における染色体分配エラー。正常な分配(シアン)と異常な分配(マゼンタ)。