卵母細胞における染色体機能の長期間維持と、ライフ時間進行にともなう崩壊のメカニズムを解明する。研究モデルとしてマウスを用いるとともに、長寿命齧歯類ハダカデバネズミを用いた生殖研究を開拓する。
成体卵巣で卵母細胞が長期間の発生休止状態に入る過程をin vitro再構築し、その機構をin vivoイメージングと連携して解明する。生殖細胞機能を獲得するための遺伝子ネットワーク、細胞環境、代謝状態の動態とその制御維持機構を明らかにする。
代謝解析を含む独自のマルチオミクス解析技術を駆使し、生殖細胞の生殖ライフスパンを通した代謝特性の変化とその制御を明らかにし、栄養環境への介入からの生殖ライフスパンの調節を目指す。
生殖ライフスパンを通した精子幹細胞の維持機構と集団動態を明らかにしてきた。生殖細胞のクローン動態、とりわけ精子幹細胞の集団がホメオスタシスを維持するときに、変異が生じた幹細胞クローンが拡大する機構を解明する。
精子幹細胞のゲノム変異を抑制する分子基盤とその機能変容が精子形成や次世代に与える影響を解明する。また生殖ライフスパンの長さが異なるマウスとマーモセットを比較し、霊長類の精子幹細胞の動態制御と変異抑制メカニズムを明らかにする。
ミトコンドリアDNA(mtDNA)は母性遺伝によって母から子へ継承される。母マウスのライフ時間進行に伴って変異型mtDNAの次世代への継承頻度が変化するという興味深い現象を見出しており、このメカニズムを解明する。
組織や細胞内において局所的なトランスクリプトームやエピゲノム情報を取得するPhoto-isolation chemistry (PIC)法をさらに先鋭化させ、生殖細胞機能の時空間的な動態を解析する。
独自に開発したRNAの合成と分解の速度を同時定量できるRNA kinetics recording法を一細胞レベルの解析に発展させる。さらにA03_01のPIC法と融合することで、生殖細胞において空間的に解像したRNA合成・分解の速度を測定する。
マウス核移植によるクローン胚の作成をモデルに生殖工学技術を開発し、A01_01と共同で老化卵子の染色体分配を正常化する技術に取り組むなど、生殖ライフスパンを操作する技術を開発する。
マウス胚盤胞期胚
マウス新生仔
マウス卵子を操作する様子。
体細胞クローンや顕微授精、卵子の核置換などの操作技術を利用することで、ライフ時間進行に伴う卵子の質の変化を明らかにする。
受精後4日間経過したマウス胚盤胞期胚。
仮親子宮への胚移植後19日目に誕生したマウス胎児と胎盤。
雌のライフ時間進行に伴い、胎児や胎盤には様々な異常が生じる。
実験用マウスと異なる様々な特性をもつ野生マウス。
ゲノム多型を利用することで、両親由来のゲノムを判別し、刷り込み遺伝子の解析などに役立っている。
転写・転写後の組み合わせによる遺伝子調節
霊長類を利用し生殖ライフスパン制御メカニズムの解明に取り組む
研究概要
霊長類を利用し生殖ライフスパン制御メカニズムの解明に取り組む
霊長類とマウスは寿命が大きく違うにも関わらず次世代に伝えられる新規突然変異の数は同程度である。
マウス精子形成の場である精細管のヘマトキシリンーエオジン染色。 幹細胞から精子まで分化している細胞が同心円状に規則正しく並んでいる。
マウス精子形成の場である精細管の免疫染色 (減数分裂期染色体に局在するSCP3に対する染色:緑、マゼンタはDNA)。 幹細胞から精子まで分化している細胞が規則正しく並んでいる。
マウス精巣の免疫組織染色像(RARgamma)
代謝経路阻害の生殖細胞への影響
統計的に有意差のある代謝化合物の特定
特徴的な代謝化合物セットの抽出
人工的に作成した卵母様細胞
人工的に休止させた卵母細胞
人工的に作成した卵子
人工的に作成した卵母様細胞
ハダカデバネズミ
ハダカデバネズミ
卵母細胞における染色体の三次元追跡。染色体(マゼンタ)、動原体(緑)。
卵母細胞の紡錘体。染色体(青)、動原体(マゼンタ)、微小管(シアン)。
老化した卵母細胞における染色体分配エラー。正常な分配(シアン)と異常な分配(マゼンタ)。