公募・メンバー(2024−2025年度)

A01 生殖細胞機能による生殖ライフスパン

淨住 大慈

基礎生物学研究所

長期安定的な生殖の基盤となる精子成熟制御システム

雄の配偶子は、精巣での精子形成に加え、精巣上体で機能的に成熟し、受精能力を獲得する必要があります。この精子の成熟はライフスパンを通じて維持されなければなりません。そこで本研究では「長期間安定した生殖を支える精子成熟の制御システム」を解明します。具体的には、(1)精巣上体による精子の成熟制御メカニズム、及び(2)精子成熟の分子メカニズム、の2点を分子レベルで解明します。

菊地 真理子

名古屋大学大学院理学研究科

生殖ライフスパンにおける生殖細胞の性の恒常性維持機構の解明

生殖細胞の性(卵を作るか精子を作るか)は生殖ライフスパンを通じて変わらない性質のようにも思える。しかし魚類の中には発生の途中で卵形成から精子形成に性転換するものがいるほか、環境要因が生殖細胞の性に影響を及ぼす例もあり、その実態は動的である。本研究では、生殖細胞の性が成長に伴い変動するメダカ変異体をモデルとして、その変動要因と階層性を分子レベルで究明し、生殖ライフスパンの動的な性質に迫る。

石黒 啓一郎

熊本大学発生医学研究所

細胞周期のG2期を減数分裂仕様に特殊化する仕組みの解明

減数第一分裂前期と呼ばれる時期は、細胞周期のG2期に相当する。そのタイムスパンは通常のG2期と比べて際だって長いことが特徴で、この時期に減数分裂仕様に染色体の再構築が起きるように特化されている。本研究では、細胞周期のG2期を減数分裂仕様に特殊化する仕組みの解明を目的とする。体細胞分裂のG2期と減数第一分裂前期との本質的な違いを生み出すメカニズムの解明を目指す。

永松 剛

山梨大学 生命環境学域 高度生殖補助技術センター

環境要因に基づく原始卵胞休眠状態の獲得及び維持機構の解明

卵母細胞系列は、卵巣内に未熟なまま休眠した原始卵胞として貯えられ、それらの一部が成熟することにより継続的な卵子の産生を実現しています。原始卵胞の枯渇は生殖能力の喪失を意味しており、原始卵胞の休眠と成熟開始の制御は、雌の生殖能力を決定する上で極めて重要です。本研究は、卵巣組織における環境要因という新しい視点からこの卵母細胞の休眠の獲得および維持機構の解明に迫ります。

中村 肇伸

長浜バイオ大学・バイオサイエンス学部・エピジェネティック制御学研究室

胚性ゲノム活性化の分子機構の解明

受精直後の胚では遺伝子発現が完全に停止しているが、一定時間経過後に胚性ゲノムの活性化(zygotic genome activation: ZGA)を端緒として、遺伝子発現プログラムが進行し、遺伝子発現パターンが変化することにより細胞の分化が生じる。本研究では、我々が最近発見したZGAの制御に関わる転写因子Glis3の機能解析を通じて、ZGAを開始する分子機構を解明することを目的とする。

佐藤 健

群馬大学 生体調節研究所

生殖顆粒構成因子によるリソソーム分解系活性化メカニズムの解明

線虫 C. elegans において生育中の卵母細胞ではリソソーム分解系の活性が低レベルに維持されているが、卵が成熟するとエンドソーム・リソソームが肥大化し、その後、受精を経てさらに活性化していく。私達はこの過程に生殖顆粒(P顆粒)の構成因子が関与することを見出している。そこで、本研究では、卵―胚性遷移における生殖顆粒構成因子を介したリソソーム分解系活性化の分子機構とその生理的意義の解明を目指す。

岩崎 由香

理化学研究所 生命医科学研究センター

トランスポゾンとその制御機構が形作る生殖ライフスパン

本領域が着目するライフ時間のなかでも、とくに胚発生期においてトランスポゾンの発現状態が大きく変動することが知られている。正常な発生には、トランスポゾンが様々な抑制機構による制御を受けることが必須であることが示されているが、トランスポゾン抑制の何が正常な発生に寄与しているかは未だ不明である。本研究では、トランスポゾンの発現とその制御機構の相克が生殖細胞の質を担保している、という仮説の証明を目指す。

大杉 美穂

東京大学 大学院理学系研究科生物科学専攻
発生細胞動態学研究室

マウス卵の「質」と細胞質流動との関連解析

卵の「質」はライフ時間の進行を含むさまざまな要因に影響を受け変化する。細胞骨格であるアクチンも卵の質を決める要素の1つであると考えられているが、具体的な知見は少ない。本研究では卵細胞に特徴的なアクチン機能である細胞質流動に着目する。マウス未受精卵、受精卵の細胞質流動の発生機序を明らかにするとともに流動と発生能の関係の検証を通し、細胞質流動の卵の質の指標としてのポテンシャルを探る。

A02 次世代のための生殖ライフスパン

金井 克晃

東京大学 大学院農学生命科学研究科 獣医解剖学教室

次世代のためのセルトリバルブニッチの生殖細胞の保全機構

哺乳動物の曲精細管の精子幹細胞(SSC)は、基底区画内を自由に移動し、空間的に特定の領域に制限されない(openニッチ)ため、利己的なSSCクローンの選択が生じるものと想定される。一方、精細管の基部のセルトリバルブ(SV)において、ショウジョウバエ精巣のように、ごく少数のSSCが安定して維持されている(closedニッチ)。 哺乳類の精巣のSVニッチのSSCの特性を解析し、曲精細管のSSCと比較することで、その生物学的意義を明らかにする。

内村 有邦

放射線影響研究所 分子生物科学部

超可変メガゲノム領域を含むゲノム情報の次世代継承メカニズム

生殖細胞を通じて、次世代に受け継がれるゲノム情報がどのように維持され、どのように変化するかを理解することは重要です。私たちは、実験用マウスの飼育を続け、これまでに60世代以上の継代を重ねてきました。世代を超えたゲノムの変化を調べたところ、大規模な構造変化が、予想以上に高頻度に起きることなどが明らかになりました。世代を超えたゲノム情報の継承の観点から、本研究領域の進展に貢献していきたいと考えています。

小林 悟

筑波大学生存ダイナミクス研究センター

ショウジョウバエ始原生殖細胞におけるpiRNA産生開始機構

次世代にゲノム情報を正確に伝えるために、生殖系列(生殖細胞を生み出す細胞系譜)ではトランスポゾンの発現を抑制する機構が備わっている。本研究では、ショウジョウバエを用いて、生殖質を多く取り込んだ生殖系列は、取り込みが少ない生殖系列と比較し、 piRNA産生をより強く活性化することができ、トランスポゾンの発現を抑制するという仮説を検証する。また、生殖系列の発生を進める機構についても解析する。

篠原 隆司

京都大学大学院医学研究科

マウス顕微授精が老化に及ぼす影響の解析

我が国では11人に一人が生殖補助医療により生まれている。ICSIは少量の精子からでも子孫を作出できるためにその約7割で用いられている。しかしながら、ICSIは兎2羽、牛2頭が生まれただけで臨床応用されたため、安全性については疑問視されてきた。昨年ICSIが孫からひ孫の世代で奇形を頻発することを申請者が発見した。本研究はICSIが老化に及ぼす影響を解析すると共に、その異常を予防することを目的とする。

山内(石川) 祐

横浜市立大学 大学院 医学研究科 臓器再生医学

霊長類精巣の器官培養を用いた精子形成開始機構の解明

サルは非ヒト霊長類として多方面の研究で用いられているが、精子形成がどのように進行しているのかについては不明な点が多い。未成熟なマウス精巣を用いて体外で精子形成が誘導できるようになったことから、他の動物種でも精巣培養が適応しつつある。本研究では、構築中の体外精巣培養系を用いて精子形成の”始まり”に関わる要素(因子)を明らかにし、ヒト・サル等の霊長類の精子形成過程について理解することを目指している。

A03 生殖ライフスパン研究のための技術開発

山田 真太郎

京都大学医学研究科健康加齢医学・白眉センター

少数の細胞で全ゲノムのDNA損傷、修復、組換え反応を網羅的に検出する技術開発

減数分裂期組換えは、減数分裂期の染色体分離を保障し、配偶子の遺伝的多様性を増やす。減数分裂期組換えは年齢により変化するが、その機構は多くが不明である。またゲノム損傷がいつどこでどのような頻度で生じ、突然変異や生殖細胞の品質低下につながるのかは未解明な点が多い。本研究は、組換えやゲノム損傷を高感度で検出する手法を開発し、これらの問題の解決に貢献する。

河崎 史子

東京大学 定量生命科学研究所 RNA機能研究分野

1細胞piRNA並列計測で検証する、母性エピゲノム継承のゆらぎ

PIWI-interacting RNA (piRNA)は生殖細胞を介して次世代に伝播し、世代を超えて有害な遺伝子の活性を抑制し続けることで、種の保存に貢献する。本研究では、核酸バーコーディングによる1細胞識別やバイオケミカルな反応の自動化・高収率化を通じて1細胞piRNA並列計測の決定打を創出し、加齢、環境因子及び遺伝子変異などがpiRNAを情報担体とした母性エピゲノム継承の多様性に与える影響を検証する。