自然科学研究機構 基礎生物学研究所 生殖細胞研究部門 研究員
名古屋大学 大学院医学系研究科 腫瘍病理学 客員研究者
佐藤 俊之
受賞コメント:この度は若手の会で優秀発表賞をいただき、ありがとうございました。今回の研究は、生殖サイクルの中でも男性の成体期(大人)に注目して、精巣の働きを調べたものです。精巣は生涯を通じて精子を作り続けるのが重要なミッションです。この使命を果たすために、精巣は、精巣内のどこで・どのくらい精子を作るかを、「精巣全体として」調節しているはずですが、調節の実態や仕組みはよく分かっていません。私たちは、1800年代に見つかった「周期と波」という不思議な現象を手がかりに、マウスの精子形成を何日もビデオ観察することで、調節の仕組みに迫る鍵を見つけました。さらに、数理生物学的な考察を加えることで、「細胞たちの交流によって、まるで人間社会のように、自然と精巣全体の調和が生まれてくる」様子が浮かび上がってきました。基礎的な仕事ではありますが、さらに思春期・加齢期や病気を理解する基盤となるよう、広がりのある研究を展開できればと思っております。今後も若手の勢いで本領域を駆動できるよう、切磋琢磨して頑張ってまいります。
理化学研究所 生命機能科学研究センター
染色体分配研究チーム 基礎科学特別研究員
竹之内 修
受賞コメント: 細胞には、大きさや遺伝子数の異なる多様な染色体が含まれています。細胞分裂において、個々の染色体は均等に分配され、次世代へ遺伝情報が継承されます。しかし、この分配に異常が生じると、細胞の癌化、受精卵の流産や先天性疾患につながることが知られています。既存の研究により、個々の染色体の分配異常の頻度は異なることが知られていましたが、そのメカニズムは不明でした。そこで、本研究では、CRISPR-Cas9の原理を利用したCRISPR-Siriusという技術を応用し、マウス卵母細胞内の個々の染色体の動態を解析しました。結果、個々の染色体はそのサイズに応じた独自の挙動を示すこと、その挙動が原因となって加齢時に分配異常が誘発されてしまうことが確認されました。若手の会において優秀発表賞をいただきましたが、慢心せずに自由な発想と心持ちで研究を続けていきます。ありがとうございました。